Independent Tokyo 2025 審査員特別賞・小山登美夫賞 受賞!! 林鳥さんインタビュー




みなさんはIndependent Tokyoをご存じですか?

株式会社タグボートが主催する、若手の新進アーティストが自身の作品を展示販売することができるブース出展型アートイベントです。





今年は8月2日(土)~3日(日)に開催されました。

Independent Tokyo 2025 の詳細はこちら↓

https://www.tagboat.com/artevent/independenttokyo2025/index.php


今回、ルカノーズ目黒校・絵画コースに通う林鳥さん審査員特別賞・小山登美夫賞を受賞しました!おめでとうございます!!

※ご本人の希望により顔写真・本名ともに非公開とさせていただきます


Independent Tokyo 2025の林鳥さん展示ブース


今回は林鳥さんの受賞作品を紹介しながら、目黒校にて行ったインタビューの様子をお届けします!

(実施日:2025.8.23 / インタビュアー:ディレクター・日本画コース主任 河合)



ルカノーズとの出会いと、そこから広がった作品制作の新たな可能性

河合:現在、ルカノーズの在籍期間はどれくらいになりますか?

林鳥:2023年9月に入ったので、 2年弱です。


河合:そのとき入ろうと思ったきっかけは?

林鳥:もともと絵を描くことに興味があって、仕事も落ち着いてきたタイミングだったので、絵画教室に通ってしっかり習ってみたいなと思っていました。ルカに入る前に、じつは一度ほかの絵画教室に数カ月通って、リンゴのデッサンを描かされたりしていたのですが自分にはあまり合わなくて(笑)。他のところを探すか独学でやっていこうか考えていた時にルカを見つけました。


河合:どういうところが「自分には合わない」と感じたのでしょうか?

林鳥:基礎が大事なのは重々理解しているんですが、自分の中に「もっとこんな絵が描きたい」っていう強い気持ちがあったのが一番率直なところですね。


河合:ということは、現在ルカでは自由制作をしているのでしょうか?

林鳥:いえ、矛盾するようですが、ルカではカリキュラムの課題をやって、自由制作は家でやるようにしています。自分が家で作った作品をルカに持ってきて講師の方々に見てもらったとき、適当にあしらわれず真剣に向き合ってくれたり、参考になるアドバイスをもらえることが嬉しいです。


「作品名」(2025)サイズ、素材

河合:家で自主的に制作をするようになったのはいつからですか?

林鳥:数年前からコツコツ、休日にたまに描いたりしていました。ただ、当時はデジタルで描くことが多く、画材をしっかり揃えてキャンバスに描くようになったのはルカに入ってからです。


河合:ルカに通っていて印象的だったことや、「こんなところが好き」というところはありますか?

林鳥:プロの講師のみなさんから技術を学びつつ、ただ描いているだけでは中々分からない「現代アート」について知れたり、教室自体に遊び心があるところが好きです。ダニエル・スポエリ(Daniel Spoerri)を真似して、教室で皆さんが焼きそばを食べたあと皿を壁に貼っていたことが印象的でした。

※2024/3/29(水) ヨガ+現代アート講座 ティラヴァ-ニャに学ぶ『体感リレーショナル・アート/ザ・お花見』https://lukanose.blogspot.com/2024/03/327_29.html


2024/3/29に開催された、ヨガ+現代アート講座 ティラヴァ-ニャに学ぶ『体感リレーショナル・アート/ザ・お花見』にて、ダニエル・スポエリ(Daniel Spoerri)に倣って制作された「お花見の宴の跡」



「作る」だけじゃない、「見せる」ことについて貰ったアドバイス

河合:いいですね(笑)。ルカで講師に自分の作品を見てもらったり、あるいはカリキュラムに取り組む中で、 「このアドバイスは自分にとってプラスになった」と感じたものはありますか?

林鳥:自分にとって印象的だったのは、2024年のヒカリエ展の作品制作のときです。画用紙に描いたドローイングを何枚かレンジ先生に見せたんですが、「悪くないけど、紙に描いたドローイングだとまだ弱いから、キャンバスに絵具で描いてみたら?」と言われ、ただ描くだけでなく見せ方や人からどう見られるかの意識も大事だという事に気付きました。また、展示に出す絵のキャンバスの側面を額で隠したり白を上塗りして整えずに、あえてそのまま見せたほうがこの絵の魅力が伝わるよと言われたり、逆に紙のドローイングはしっかり額装して整えることを教わったり。そういう知識は目から鱗でした。


「作品名」(2025)サイズ、素材
 

河合:たしかに、自身のモチベーションや創作意欲で好きなように絵を描ききることはできても、展示の仕方や見せ方にはセオリーや経験からくるメソッドが必要ですよね。

林鳥:はい、「そんなところにこだわるんだ」とか「こういう所に気を遣うんだ」ということを教えてもらえたのはとても重要でした。知らないことはやりようがないので。

逆にほかの先生からは、「ドローイングのしわやシミを消したり隠す必要はないよ」というアドバイスも貰ったりして。第3者から自分の作品がどう見られるか、どう見せるかということを考えるようになりました。


日々の制作についての考え方と、Independent Tokyo 2025 への挑戦

河合:Indepent Tokyoに出展しようと思ったきっかけは何だったんですか?

林鳥:ルカに入って以降、「日々の記録」のような感覚でコツコツ絵を描き貯めていました。自分なりに一貫性を持ってある程度の作品数を描いたところで、一度この作品たちを人前に出したいなと思うようになりました。自分の家の外だとどのように見えるんだろう?ということも気になりましたし。


河合:なるほど。今回出展した作品はどれも日記みたいに、日々淡々と描き続けていたものという感じですか?

林鳥:そうですね。家にテーブル 1個しかないんで、そこで食事して仕事してみたいな感じなんですけど、絵もそこで描いています    。モチーフは食器が多いです。 なにか描きたいなと思った時に取っ掛かりとして、まず目の周りにあるものを描こうと思って。よく机の上に置いてある急須や、取っ手が割れちゃったマグカップとかをひたすら描いていました。その延長で、身近にあるものとして「自分の顔」を描いたり。そういったものを通して、自分がその時々思ったことを描写してたのかなと思います。

「作品名」(2025)サイズ、素材



「作品名」(2025)サイズ、素材



河合:身近にあるものの「形」や「色」を手掛かりに自身のイマジネーションを増幅させて絵画にするという制作プロセスに至ったのはどういった経緯からなのでしょうか?

林鳥:日々生活していろんなことを感じる中で、絵を描くということは自分にとって地に足をつける行為だと思っています。なんとなく好きなものを描きました、ではなくて、目の前にあるものに向き合おうっていう感覚があったのかもしれません。


河合:なるほど。つまり絵画制作よりも前にそのような価値観があり、制作プロセスにも影響を及ぼしたと。

林鳥:そうですね。学んだとかじゃないです。私はつい頭で考え込んでしまうタイプなので、身近にあるものにしっかり向き合う・観察するということが、絵に限らず生活全体においてすごく大事で、それが制作にも反映されたんだと思います。

自分は結構内向的だけど、だからこそ人と関わったり、外に出てものをよく観察したりっていうことを大切にしていて...だから自身の人生哲学のようなものが先にあって、絵もその一部という感じです。


河合:今回のように、公募や展示に作品を出品したのは初めてですか?

林鳥:過去に一度、アメリカ人がやってるオンラインの文芸雑誌みたいなものがあって、その挿絵に何度か応募して選ばれたことはありましたが、ルカのヒカリエ展を除いて実際に壁にかける形での展示は初めてです。


参加してみてびっくり!?搬入・設営の難しさと、展示が始まって感じたこと

河合:自分の作品を展示して、それをたくさんの人に観られる経験はどうでしたか?

林鳥:その前に、設営というものがこんなに大変だとは思いませんでした(笑)。仕事終わりにヘトヘトの身体で搬入に行ったんですが、会場のクローズまで残り30~40分くらいしかなくて。工具もしっかり揃えていなかったので、最初はスマホの角で釘をカンカン打ったりしてたんですが、このままだとスマホが壊れるなと思って。日傘の柄の部分でやってみたら上手くいきました(笑)。

何が必要かとか、どうやればスムーズにいくかは、やっぱりやってみないとわからなかったです。

一番大変だったのは「高さ」でした。私は身長が低いので、高いところに絵を掛けることができず、脚立とかも用意してなかったので、周りと比べると絵の位置が一段低いような感じになってしまいました。


河合:今の話を聞いてたら、設営のための道具をしっかり揃えて行けたわけじゃないんですね。日傘でガンガンやってたり(笑)。例えばメジャーとか水平器も...?

林鳥:持っていってないですね(笑)。周りの人を見て、「ああ、あんな道具があれば簡単に設営できるんだ」って初めて知りました。


河合:開催期間中は、自身の展示ブースの様子を改めて見に行きましたか?

林鳥:人前に立つのがあまり得意でないので、設営した絵が落ちていないか確認するために初日に行って、そのあとはすぐ帰ってしまいました。

今回、自分が描いた絵たちを外に出すことがゴールだったので、正直なところ、どんなふうに受け止めてもらえるか、というところまでを考える余裕はあまりありませんでした。自分にとって絵は他人の目は気にせずに取り組める自由な領域なので、まずはそれを大切にしたかったんです。だから今回はあえて、第三者の方からの反応はあえて気にしないようにしていたと思います。生活の中でどうにか時間を捻出して絵を描くことで、自分の心にちょっといいこと・栄養になることしているという感覚なので、そこでそれ以上のことを求めるのは、今の自分の絵との関係性に適切ではないと思いました。


「作品名」(2025)サイズ、素材


小山登美夫賞受賞について

河合:とてもいい話ですね。ではその一方で、今回大きな賞(小山登美夫賞)を受賞したことについてはどう感じていますか?

林鳥:すごくびっくりしました。授賞式の場に立ち会うことはできなかったのですが、ちょうど夫が会場にいて知らせてくれました。中々ない経験だと思うので文字通りありがたかったです。自分なりに追求してきたものが、自分以外の方に伝わったように感じてとても感慨深かったです。

賞状を持つ林鳥さん(ご自身の展示ブースにて)



絵を描くことについての「過去・現在・未来」

河合:少し質問も方向性を変えますね。子供のころからお絵描きや工作、ひとり遊びみたいなものは好きでしたか?

林鳥:はい、昔から好きでした。小っちゃい頃から、お家でお絵かきしてましたし、学校の図工とか美術の授業も楽しくて、成績も割と良くて、みたいな感じでした。美術系の大学への進学も考えたんですが、結局は選びませんでした。


河合:美大・芸大を出ても、作ることを辞めてしまうひと、周りからの評価を気にして苦しくなって作れなくなってしまうひとはたくさんいます。そんな中、自分のテーマをしっかり持って、周囲の評価に流されず制作に向き合えているのはすごく素敵なことだと思います。自然とそのようにできているのか、それとも「私はこうありたい」と努力しているのか、どちらでしょうか?

林鳥:絵に限らず、何か欲しいなら代償を払わなければならないと思っているので、好きなように絵を描きたいなら、褒めてもらおうと思っちゃいけないし。自分の事を信じて何かするのであれば、周りから応援したりしてもらおうと思っちゃいけないし、批判も甘じて受けなきゃいけない。そもそもそういう価値観なんです。


河合:では、今の林鳥さんにとって、絵を描くという行為はどういうものですか?

林鳥:根本の動機はあまりポジティブなことじゃない気がしてるんですが、ネガティブとか暗いことから楽しく何か作れるってことって、自分にとっては何にも代えがたいことなんです。生活のなかにある一見愉快じゃないことから、可笑しさというか、ユーモアを見出して絵を描くことを大事にしています。その工程が自分にとって単純に楽しいし、必要だからやっているという感覚です。


「作品名」(2025)サイズ、素材


河合:今後のビジョンを教えてください。

林鳥:画用紙や卓上に置けるくらいのキャンバスで絵を描いていたので、もっと大きい絵を描いてみたいです。小さい家で小さい机で絵を描いて、その机の向かいの席で夫が仕事をしているっていう環境なので、大きい場所で大きい絵を描いたらどうなるんだろうっていう興味はあります。個展とかも将来的にはできたらいいなと思います。


河合:大きい絵に挑戦したらきっとまた新しい発見がありそうですね。

林鳥:はい、挑戦してみたいです。今回、人に見てもらえることってこんなに嬉しいんだって知ることができました。今までは人に見せる事は考えてなかったので。とても良い経験になりました。


河合:それではこれでインタビューを終了します。ありがとうございました。

林鳥:ありがとうございました!





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